(※ 本記事の文章は2022年11月に書かれたものです)
フュージョン界の大御所ギタリスト、高中正義のライブに行ってきた。今年の公演は私が大好きな名盤「Saudade」がちょうど40周年だということもあり、この作品から沢山演奏すると聴いていただけあってめちゃ楽しみにしていた。
会場の大阪城音楽堂に入ると、これまたセットが良い。野外ということもあり既に哀愁があるのに、夏を感じさせる植物が植っていたりコンガが目立っていたりして、私は今80年代にいるのだろうか...と錯乱する。だったらもう、"私は80年代にタイムスリップしてライブを観に来たのだ"、という設定で公演に浸ってやろうかと思う。そのほうが感動モノである。
...と、そんな決意をしたところで、ライブは遂に開演。まだ明るい空の下で高中正義さんが登場し、「Saudade」の一曲目「A Fair Wind」を軽快に弾く。やっぱりこのセットでこの曲は、私を殺しにかかっていた。感慨深くなりすぎる。若干汚れた古臭い音楽堂の屋根が良い感じに合わさり、高中正義のライブというよりかは、80年代の暑苦しいジャズ・フェスに参戦しているような気分にさせてくれる。そして、二曲目には私のフェイバリットである「Saudade」が舞い込んできやがったので、私はより一層目を凝らし、彼のギタープレイに耳を傾ける。何度も感動させられたこの旋律を生で体感できるとは...これほど贅沢なものはない。原曲を忠実に再現した超絶技巧のソロには言葉も出ず。
その後は、バラードやハードロック調のかっちょいい楽曲などを経由し、またまた名盤から「New York Strut」が披露される。これはこの日一番の感動シーンだった。少し陽が落ちてきたかな...という空の下、紫色のライトアップに照らされ、感動のBメロ。これを聴いているときは確実に、世界は80sへと化していただろう。
ライブは中盤に差し掛かり、コーラス隊が登場しての「渚・モデラート」でまたまた魅せられ、ジョルジ・ベンのカバー「Taj Mahal」で高中さん自身がボーカルをとったりしながら、ライブは終盤へ。そして盛り上がった雰囲気のまま、代表曲「Thunder Storm」や名曲「Blue Lagoon」がやって来る。空は真っ暗、会場は綺麗にライトアップされる中、狂熱のギターが鳴るわけで。これは魅せられない人など存在せず。
さらにアンコールでは、昔サンタナと演った「Ready to Fly」を爆発させ、本当に会場はフェス空間へと化す。最後はサディスティック・ミカ・バンドの「黒船」で穏やかに締めくくり、静まり返ったところで拍手が起き、公演は終了。ラストまで哀愁味は消えなかった。
高中さん、途中キャスター付き椅子に座り、ギターを弾きながらステージ上を滑っていたり...あとカルロス・サンタナがでかいピックを使っていたからって、うちわサイズのピックを持参し速弾きをやってみたり...。何というか、子供みたいに無邪気で、とにかく自分のステージを楽しんでらっしゃった印象。これほど愉快に、かつ軽快にギターを弾ける彼は、やっぱり昔から変わらず天才ギタリストだなぁ、と強く感じた。ぜひまた行きたい。
・高中正義「Saudade」(1982)
https://m.youtube.com/playlist?list=OLAK5uy_mCENYRDatBdh5nwwBW1hvRfZcLbkJAY8g